こんにちは、こんばんは。ゆきやなぎと申します。
前回の記事では、
・11月第3週/芝2000m(府中)に施行時期/距離を変更するべき。
という、ジャパンカップに外国馬が来ない問題への提言をさせていただきました。
※この記事からご覧になった方へ:ここまでの内容については下記の記事よりご覧くださいませ。
・1(一般的な解決策である「複数G1同日開催」への反論)
・2(ゆきやなぎの改革案の前提条件/「3C分析」の導入)
今回の記事からは、なぜそのような提言に至ったのかという、根拠を示していければと考えています。
東京大学出身/ITコンサルタント/競馬好きとして、多くの方に納得いただける筋の通った根拠になっているものと思っておりますので、是非最後までお付き合いいただけますと幸いです!
改革案の根拠
概要
今回の改革案の根拠の大枠は、
・ジャパンカップに外国馬が来てもらえるようになることは、ジャパンカップという「商品」を、外国馬(外国陣営)という「顧客」に選んでもらうこと(=マーケティング)と同じである。
という考えから、マーケティングの思考的枠組みである3C分析を用いて解決策を検討した結果、
・距離を2400mから2000mに変更
・レース時期を、現状の11月第4週から1週間早めて11月第3週へ移動
することが最適解だと考えられるからである、というものです。
そのうえで、3C(Customer、Competitor、Company)について、それぞれ何を分析したのかは以下の通りです。
※3C分析とは何かについては前回記事をご参照ください。
① Customer=顧客
前回記事で述べた前提条件により、変更後のジャパンカップは、秋季(9~12月ごろ)かつ2000~2500mである必要がある。
この条件で参加してもらえる(日本馬と好勝負できる)可能性のある外国馬が誰であるか/彼らは現状どのような目的で、どのようなローテーションを歩むことが多いのかを考えた。
② Competitor=競合
上記①で想定した外国馬について、ジャパンカップに来てもらう際にライバルとなる存在は何か/ライバルに入り込む余地はないのかを考えた。
③ Company=自社
ジャパンカップ/それを開催するJRA自体の強み・弱みを考えた。
それらについて考えたとき、
・11月第3週/芝2000m(府中)に施行時期/距離を変更
することで
① 想定される主要な顧客(外国馬)について、
② ライバルにない魅力をアピールして取り込むことができる。
③ 現状のジャパンカップが外国馬に敬遠される原因(弱み)も取り除くことができる。
ということが、見えてきたのです!
① Customer=顧客 について
来てもらうべきは欧州中長距離路線の実力馬!
秋季(9~12月ごろ)かつ芝2000~2500mで実施する前提で考えたとき、今後のジャパンカップに参加してもらいたい外国馬として、最も意識するべき属性は
・欧州調教馬(一部UAE調教馬を含む<※>)
・3歳以上
・芝中長距離の実績馬
になってくると考えております。
(ジャパンカップ改革案の前提事項およびその理由についてはこちらをご参照ください)
<※>ビン・スルール厩舎がドバイとイギリスの両方に拠点を構えているなど、UAEと欧州の線引きがあいまいなため、調教国としてUAEは欧州に含めて記載させていただきます。以下同様です。
しかし、「ジャパンカップに外国馬が来ない問題は、まさにその属性の外国馬が来てくれないからなのに、なぜターゲットを変えないのか?」と思われた方もいらっしゃると思います。
それでも私は、ジャパンカップではあくまでも上記属性の外国馬に来てもらうようにするべきだと考えています。
なぜなら、芝2000~2500mで、現時点で外国馬の招待に成功している世界の各レースにおいて、現実として来てもらっている外国馬の属性がそうだからです。
今回、芝2000~2500mで外国馬の招待に成功しているといえるであろう以下の3レースについて3着以内に好走した外国馬(日本馬を除く)について、調教されている地域がヨーロッパか、それ以外かに分けて過去10年の頭数を集計しました。
<対象3レース>
・ブリーダーズカップターフ (アメリカ・11月上旬・芝2400m)
・香港カップ (香港・12月上旬・芝2000m)
・香港ヴァーズ (香港・12月上旬・芝2400m)
結果は以下のようになりました。
【集計】BCターフ,香港C,香港V上位馬_2014~23
※グラフのもととなる上位馬一覧(表)についてはこちらをご覧ください。
・ブリーダーズカップターフ
・香港カップ
・香港ヴァーズ
以上のように、現状、外国馬の招待に成功しているようなレースにおいても、ほとんどがヨーロッパ調教馬であり、それ以外で調教された馬はほとんど皆無であることがわかります。(日本馬を除く。)
以上のデータに加え、その路線における競走馬のレベル、11~3月にオフシーズンがあること、などを考慮すると、結局来てもらうべき相手は欧州馬である、という事実は揺るぎないものであると私は考えています。
欧州中長距離馬のスケジュール
では、秋競馬(9~12月)において、欧州中長距離の実力馬たちはどのようなスケジュールを歩むのでしょうか。
これを考えることが、ジャパンカップを彼らの需要に合わせ、来てもらえるようにするための検討につながってくるため、考えていきたいと思います。
欧州では2000mと2400mは別カテゴリ
欧州中長距離馬のスケジュールを考えるうえで1点、日本人が見落としてしまいがちで重要なポイントがあります。
それは、欧州では中長距離の中でも2000mと2400mは別カテゴリとみなされ、(あたかも日本競馬における中長距離とマイルのように)、競走の路線としても分かれているということです。
(イギリスはレース距離がやや独特で、2000m、2400mにぴったりはまらないレースもありますが、この記事では数十メートルの差異は不問とさせていただいています。以下同様です。)
例えば、2023年
・プリンスオブウェールズステークス (6/21・芝2000m・出走馬6頭)
・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス (7/29・芝2400m・出走馬10頭)
の2レースについて、両方に出走したのはわずか1頭(Luxembourg)だけだったのです。
また、同年の
・凱旋門賞 (10/1・芝2400m・出走馬15頭)
・英チャンピオンステークス (10/21・芝2000m・出走馬8頭)
に関しても同じく、両方に出走したのはわずか1頭(Bay Bridge)しかいませんでした。
特に前者2レースは、期間が1か月ほど空いており、日本でいえば皐月賞→日本ダービーや、天皇賞(秋)→ジャパンカップと同じようなローテーションで参加できることもあり、両方に出走したのが1頭しかいないという事実は衝撃的ではないでしょうか。
芝2000m路線のスケジュール
JRA-VANによる「重要レースへのステップレース」から、9~12月の芝2000m路線にあたるG1レースをまとめた結果が上の通りです。
2023年においても、上記のスケジュールの中から香港カップの1・2着馬が出ており、現在進行形で信頼できるスケジュール表であると思われます。
※「重要レースへのステップレース」についてはこちらのリンクをご参照ください。
芝2400m路線のスケジュール
芝2000mと同じく、芝2400m路線についてもまとめました。
2023年においても、上記のスケジュールの中から香港ヴァーズの1着馬が出ており、こちらも現在進行形で信頼できるスケジュール表であると思われます。
2000m路線よりも2400m路線のほうがG1が多い!
ここで2000m路線と2400m路線を比較すると、ジャパンカップも含まれる2400m路線のほうが、かなりG1が多いということが明らかになります。
・2000m路線:欧州内2/欧州外2
・2400m路線:欧州内4/欧州外3
つまり、それだけ2400m路線にはライバルとなるレースが多いということです。
なぜ2400m路線のG1が多いのか?
そもそもなぜ2400m路線のほうがG1が多いのか?
その大きな理由が、芝2400mが伝統的に重視されてきたからであることは、競馬好きの方であればご存じかと思います。
また、後年に作られた国際競走についても、レースの「格」を表現するためにも、2400mという距離が採用されつづけてきたのだろうと思われます。(1981年創設のジャパンカップこそ、まさにその一例です。)
歴史の浅い2000m路線は比較的レース不足
芝2400mが伝統的に重視されてきた一方で、芝2000m路線は、比較的歴史の浅い路線であるといえます。
実際に2000mと2400mを別路線とする考えが、日本ではまだ浸透していないことからも、ヨーロッパにおける最新のトレンドなのだということが推察できます。
しかし、だからこそ、2400mの距離で外国馬が集まらず困っているジャパンカップにとっては、2000mが一筋の光に見えてくるような気がしてきます…!
① Customer=顧客 について 【まとめ】
ここまで3C分析の「① Customer=顧客」についてみてきました。
結果として、
・今後も欧州中長距離の実力馬を招待するべきであること
・欧州中長距離馬の現代におけるスケジュール
を確認することができました。
そして、
・欧州中長距離のうち、歴史の浅い2000m路線については、まだレースが少ない状態であること
を分析結果として得ることができました。
② Competitor=競合 について 【次回の展望】
実はここまでの議論で、3つの”C”のうち、2つ目の「② Competitor=競合」の分析にも少し入ってきています。
つまり、「2400mよりも2000mのほうが、(同じくらい需要があるのに)ライバルが少ない」ということがわかったので、
「ジャパンカップもライバルの少ない2000mに変更したほうがいいのではないか」という競合を意識した議論に入りつつあるという形です。
しかし、それだけでは競合分析としては不十分です。
競合分析も深堀りが必要!
たとえば、現時点で2000mのレースが少ないからと言って安易に2000mに変更したあと、ライバルが追って2000mのレースを作ってきた場合、また同じ競争を繰り広げなければならなくなります。
よって、安易に判断するのではなく、より深くライバルを分析して、彼らが今後2000mのレースを作ることは難易度が高いのだということを示す必要があります。
こういった「競合」分析の深堀りについても、今回、私なりにかなり自信のある分析ができています。
「① Customer=顧客」の分析が長くなってしまったこともあるので、
次の記事で改めて、「② Competitor=競合」の分析から始められればと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
それでは!
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